圧倒的なスケールで描かれる戦国の攻防 ─ 『塞王の楯』書籍レビュー

小説

作品概要

タイトル:塞王の楯(さいおうのたて)
著者:今村翔吾
ジャンル:歴史小説/戦国時代
出版年:2019年
受賞歴:第166回直木賞受賞

あらすじ

物語の舞台は戦国時代末期、織田信長の勢力が全国統一を目前にした時代。比叡山延暦寺の門前町として栄えた大津の地に、築城の名手として知られる”穴太衆(あのうしゅう)”と呼ばれる石工たちがいた。その中でも特に卓越した技術を持つ石工、石垣造りの達人・穴太衆の棟梁である**匠・匠(しょう たくみ)**が物語の中心人物だ。彼は戦国の世で、最強の守り(楯)を築くことに情熱を注いでいた。

一方、攻めの象徴である”火矢”を駆使する武将・**織田信長**。天下統一を目指し、各地の城を攻め落としてきた信長は、匠が築いた堅牢な城郭を攻略するために動き出す。守る者と攻める者、石と火の対決──。歴史に埋もれた穴太衆の視点から、戦国の攻防が壮大に描かれていく。

見どころ・魅力

  • 戦国時代の新たな視点:武将や合戦だけでなく、城を築く石工「穴太衆」という視点から戦国の攻防が描かれ、歴史小説としての奥行きが増しています。
  • 「守り」と「攻め」の対比:守るための最強の「楯」を追求する匠と、攻め落とすための「矛」を駆使する信長。対照的な二人の哲学が物語を深めています。
  • 圧倒的なスケールの描写:石垣や城郭の構造、築城の技術が緻密に描写され、まるでその場にいるかのような臨場感があります。
  • 人間ドラマの深さ:戦国という過酷な時代を生き抜くための苦悩や葛藤、家族や仲間との絆が物語に深みを与えています。

登場人物の魅力

  • 匠・匠(しょう たくみ):穴太衆の棟梁として、戦国の世に最強の「楯」を築くことに全てを捧げた石工。冷静で頑固ながら、深い情熱と誇りを持つ。
  • 織田信長:天下統一を目指す戦国武将。冷酷さと圧倒的なカリスマ性を併せ持ち、「攻め」の象徴として匠と対峙する。
  • 仲間たち:匠を支える石工の仲間たちや、家族との絆が、戦国の厳しい現実の中で温かみを感じさせます。

こんな人におすすめ

  • 戦国時代の歴史小説が好きな方
  • 築城や城郭、石工の技術に興味がある方
  • 人間ドラマや哲学的な対立を描いた作品を読みたい方
  • 重厚なストーリーと圧倒的なスケール感を楽しみたい方

物語の深掘り

『塞王の楯』は、単なる戦国時代の戦いの物語ではありません。石工・穴太衆の視点から、城を「守る」という新たな視点で戦国時代を描いています。主人公・匠は、己の信念と誇りを胸に、最強の「楯」を築くことに情熱を注ぎます。一方で、織田信長は「攻め」を極める存在として立ちはだかります。この「守り」と「攻め」の対比が、物語の深みを増しています。

さらに、石垣や城郭の詳細な描写は圧巻で、築城の技術や石工たちの誇りが息づいています。戦国の世に生きる人々の生き様や、家族や仲間との絆、信念に基づく行動が、読者に深い感動を与えます。

まとめ

『塞王の楯』は、戦国時代の新たな視点を提供する歴史小説です。守りの象徴である「楯」を極めた石工・匠と、攻めの象徴である織田信長の対比が、圧倒的なスケールで描かれています。戦国時代の攻防や築城の技術、人間ドラマが重厚に描かれ、歴史好きはもちろん、骨太な物語を求める読者に強くおすすめしたい一冊です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました